意欲

よい面接官とダメな面接官

少し刺激的なタイトルですが、よい面接官とダメな面接官を具体的なケースから見ていきましょう。
まず、よい面接官には次のような特徴が挙げられます。

◎ 評価項目と評価基準を理解し、根拠のある評価を下すことができる。
◎ 評価項目に沿った質問をし、面接を進行することができる
◎ 応募者の志望理由を見極め、志望度向上のために適切な対応をする
◎ 関係法令やコンプライアンス上問題となるような言動を慎む

では、ダメな面接官はどうでしょう。具体的なケースをもとに考えて見ます。

× 評価項目を無視し、自分の価値観で評価をする
× 質問の内容や意図にバラツキがあり、評価に根拠がない
× 応募者の志望度を低下させたり、まちがった情報を与えたりする
× 関係法令やコンプライアンス上問題となる言動をする

面接官の良し悪しを判断するには、面接官が担う役割を整理しておかなければならないでしょう。期待されている役割に応えていれば良い面接官、逆に期待に反した面接官はダメと言えるわけです。

<面接官が担う役割>
1.人物評価
応募者の本音・本質を見極め、合否の判断をする

2.情報提供
応募者の欲する情報を提供し、意思決定を支援する

3.動機形成
応募者に「是非、ここで働きたい」と思わせる動機づけをする

4.情報伝達
今後の選考やフォローのための効果的な情報を次の面接官に提供する


1.人物評価

応募者の能力、適性、意欲や入社に向けた状況などを見極め、合否のための評価をすることです。面接の主目的はここに集約されるでしょう。評価項目に照らして応募者が秀でている能力や適性はどこなのか、逆に基準を満たしていない部分はないか。本人はどのくらい入社意志があり、入社に向けて障害となることはなにかを見極めなければなりません。 

 

2.情報提供

応募者が必要とする情報を提供することが面接官に求められますが、応募者から質問されたことに答えるだけでは不十分です。応募者は自社に対する情報不足な状態であるだけでなく、自社に対して誤解をしている可能性もあります。入社をためらう理由が誤解に基づくものであれば、すぐに修正して動機づけをしなければなりません。一方で、自社では実現不可能なことを志望理由としている場合、極端な例ですが国内のルートセールスが中心の営業職採用に対して語学力を活かしてグローバルに活躍がしたい人が応募してきた場合などは、誤解を正す情報提供が必要です。もちろん、選考に関する情報を応募者に伝えることも重要な役割です。

 

3.動機形成

まず動機形成には、正負両方の方向性があることを認識しておかなければなりません。基本的には応募者の入社意欲を喚起するための応対や情報提供が必要ですが、すべての応募者の志望度をあげることが目的ではありません。誤った情報に基づく志望動機を持っている応募者に対し、正しい情報提供をすることによって応募者の志望度が下がったとしても、その動機づけは間違った人材の入社を防ぐ手立てとなります。このように、応募者の状況を見極めつつ動機形成をすることも面接官に求められます。

 

4.情報伝達

人物評価で見極めた情報を、人事採用担当者や次選考の面接官へ引き継ぐ必要があります。応募者の内的状況として自身が評価できた項目はもちろんですが、次選考で確認すべきことや、入社に向けて心配な点はなにかも重要な点です。また、応募者の外的な状況として、同時に受けている競合はどこなのか、また自社への入社の可能性は現時点でどの程度なのか。そして入社に向けて障害となりそうな点はなにかも引き継ぎをするべきでしょう。面接官の役割は人物を評価することと同時に、良い応募者が自社に入社する可能性を少しでも高めることです。そのための情報収集と伝達が求められるのです。

 

 

陥りやすい評価失敗例

面接はほとんどの場合、やりなおしができません。だからこそ、事前の準備が重要です。特に初めて面接官を担当する人や、そのような人に面接を依頼する人事採用担当者は、事前準備を怠らないようにしましょう。さらに、面接官の経験が長い人も、定期的に自己を振り返り、適切かどうかチェックすることをお勧めします。「面接」という業務は成否がわかりづらく、往々にして「面接官」として「評価(フィードバック)」される機会もほとんどありません。面接の成否が採用の成否につながるということを十分に自覚して準備をしましょう。

ここでは、面接誤差とよばれる「面接官が陥りやすい評価失敗例」を挙げていきますが、面接精度の向上にはトレーニングが不可欠です。トレーニングによって面接官の誤差範囲が改善されたという研究もあります。「敵(応募者)を知り、己を知れば百戦危うからず」。面接では応募者ばかりに気を取られずに、面接官である自分自身の評価も忘れないようにしましょう。

1.ハロー効果
2.対比誤差
3.寛大化傾向と厳格化傾向
4.中心化傾向
5.論理誤差


1.ハロー効果

ある顕著な特性の評価が全体の評価に影響すること

「ハロー」とは、後光(仏像などの背後にある光)をさします。たとえば、「積極性の高い人は他の項目もよいはずだ」や、「協調性が低い人は他の項目も低いはずだ」と評価してしまうことです。評価項目の一部だけの評価であるにもかかわらず、ある特徴的な(プラスでもマイナスでも)特性の評価によって全体の評価を決めてしまう、新米面接官によく見られる傾向です。この評価誤差を防ぐには、(1)評価の尺度を行動基準にする、(2)面接官トレーニングを行う、ということが対策として考えられます。

 

2.対比誤差

評価の基準として面接官自身を設定してしまうこと

面接官自身の主観的基準で評価をしてしまうことで、面接官自身が得意とする分野では厳しく、面接官が不得意な分野では甘く評価が出やすくなります。たとえば「(高校時代に甲子園に行ったことがある面接官が)野球部で都道府県大会レベルの実績ならたいしたことはない」と評価してしまうことです。この評価誤差が起こる原因は、(1)面接官が評価基準を理解していない、(2)面接官が客観的な指標で評価することができない、という2点が考えられます。対比誤差を防止するためには、同じ面接段階を担当する面接官同士で事前に評価基準を共有し、互いにフィードバックしあうことが重要でしょう。

 

3.寛大化傾向と厳格化傾向

寛大化傾向 : すべての評価が甘くなる(5段階の4や5に集まる)傾向
厳格化傾向 : すべての評価が厳しくなる(5段階の1や2に集まる)傾向

寛大化傾向は相手に対して低い評価をつけることに負い目を感じる人が陥りやすく、厳格化傾向は完璧主義の人が陥りやすくなります。また、厳格化傾向は前述の対比誤差とも密接な関係があります。新卒採用でいえば面接官は社会人であり、応募者の学生よりも知識、経験などが優れていることが一般的です。すでに社会人として仕事を経験している面接官自身を基準にすれば、評価が低く集まることになるでしょう。この二つの面接誤差を防ぐためには、具体的な事実に基づいた評価をすること、その評価を他の面接官とすり合わせておくことが重要です。

 

4.中心化傾向

中心化傾向 : すべての評価が中心に集まる(5段階の3に集まる)傾向

面接官が自らの評価に自信がない場合や、評価方法を理解していない(実践できない)場合に起こる面接誤差です。面接官自信が評価の根拠を示すことができないことも多くあり、採用面接においては合否を出すことができなくなることも珍しくありません。中心化傾向を防ぐためには、「事前に評価基準を理解し、具体的事実に基づいて評価をする」トレーニングが有効です。

 

5.論理誤差

ある特性から類推される特性について、事実を確認せず評価すること

たとえば「所属する部活で全国大会出場した経験があるならば、達成意欲の高い人だろう」や、「受け答えの声が小さいので、仕事に対しても消極的な姿勢なのだろう」といった、それぞれ独立した特性を類推だけで評価してしまうことです。これは面接官の過去の経験などにもとづく主観や先入観で評価してしまうことが原因であることが多くあります。正確に評価項目について理解し、面接で確認できたこと、確認できなかったことを切り分けて評価する態度が面接官に求められるでしょう。

評価の項目と手法、面接の有効性

下の表では、採用選考の場面で一般的に用いられている各種採用手法とそこから見える人材特性についてまとめています。

評価項目

 

表を見ていただいて分かる通り、面接で評価しうる側面は他の手法に比べ圧倒的に多数です。

・職業観・職業興味 (志望動機、働く目的、働き方の好み、志向、価値観etc.)
・性格(外向性、協調性、誠実性、情緒安定性、開放性etc.)
・基本的態度・姿勢(社会性、責任性、自主性、意欲、素直さ、ポジティブ思考etc.)
・基本的能力(言語能力、論理的思考力、英語能力etc.)
・知識(専門的知識、一般教養etc.)
・スキル・コンピテンシー(コミュニケーション力、思考力、実行力、対人関係力etc.)

納得性

面接は評価しうる人材特性が多いということのほかにも、採用する側、される側にとって納得度が高いということも特徴として言えるでしょう。
その証拠にほとんどの企業では適性検査や学力試験などのペーパーテストを行ったとしても、面接試験を最も重要な(かつ最終的な)評価方法と位置付けていますし、適性検査と面接の印象が異なった場合は面接の印象を優先させているのではないでしょうか。
また、応募者にとっても何を基準に選考されているのかわからない適性検査や業務に直結しないテーマでのグループディスカッションよりも、自分をしっかりと見てくれたと感じられる面接の方が合格・不採用のいずれの場合でも納得度は高いように見受けられます。

選考フローで最も志望度が上がる「面接」

就職活動を終えた応募者に「最も志望度が上がった瞬間は」というアンケートを取ると、「面接」と答える学生が最多数になることが良くあります(下図参照)。

就職活動のどの過程でもっとも志望度が高まりましたか。

出典:2013年大学生の就職活動ふり返り調査 株式会社 リクルートキャリア

一般的に企業は応募者の魅力付けを会社説明会やグループワークとし、面接は見極めの場としていることが多いにも関わらず、なぜ応募者は面接で志望度を上げるのでしょうか。具体的に志望度が上がった面接としては以下のようなコメントが集まっています。


□ただ質問されるのではなく、お互いに意見を交わすことができ、価値観の交換ができた。【文系・男性】

□一次面接から集団ではなく個人面接だった。質問内容もあなたならこのような場合にどう対処しますか?といった、職場で想定される事態について、自分の考えをしっかり聞いてくださった。人柄や考え方をきちんと見てもらえた気がして志望度が高まった。【理系・女性】
□自分の仕事内容を楽しそうに語ってくださった社員の方とのリクルーター面談は、志望度が上がった。 自分が入社したら、というイメージもつかめた。【文系・女性】
□「なぜ?」を重視する面接で、自分がどういう考え方をしているかを知ろうとしてくれていると感じた。【文系・男性】
□面接という感じではなく、普通の会話のように面接を進めてくれた。いつも緊張して上手く話せない私でも、初めて素を出して話すことができた。【理系・女性】

出典:2013年大学生の就職活動ふり返り調査 株式会社 リクルートキャリア


 

上記のコメントに共通することは「自分の事を深く知ろうとしてくれた」という心理ですが、これは心理学でも定義されている「返報性」という人間の特性に関係しています。返報性とは、他人から何か恩恵を受けた後、お返しをしなければならない気持ちになることです。熱心に恋愛相談に乗ってくれた人とその後付き合ってしまうケースなどは、この原理が働いている分かりやすい例かも知れません。

面接で相手を知るために丁寧に質問をしていくことで、応募者の志望度を上げることも可能なのです。

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プロブスト法とは?

1930年にアメリカのセントポール人事委員会のJ.B.プロブストが開発した、人事考課の一種です。はじめは公務員の人事考課に使用され、その後、産業界にも普及しました。人事考課に用いられるプロブスト法は、2つの過程から成り立っています。第1の過程は従業員についての客観的事実を得るために勤務報告書(チェックリスト)を作成することです。勤務報告書には、成功体験、失敗体験を表す具体的な行動・態度等が100個程度(特別の知識や熟練、正確性、信頼性、人格、生産量など)の項目があります。第2過程では、その報告書(チェックリスト)の中で存在すると確信できる項目を、応募者の実際の行動や起こった事実をもとに複数人でチェックして評定するという仕組みです。

採用で用いられるプロブスト法は、ビジネスパーソンの能力や態度等に関する評語(短文)を相当数ランダムに列挙し、応募者について観察された項目にチェックを入れて応募者の人物特徴を浮き彫りにする、という手法です。短文チェック法とも呼ばれています。

ハロー効果(ある一面の印象で他の面の評価も引きずられてしまう評価エラー)や論理誤差(事実を確認しないで、一つのことから関連付けて他も推論で評価してしまう評価エラー)、中心化傾向や寛大化傾向(その逆の厳格化傾向)といった面接で発生しやすい評価エラーを防止する効果があります。最終得点が評価者にもわからないので作為性を排除し、公正が期せるという長所もあります。「人物明細書法」とも呼ばれるように、共通言語をもって人物特徴が細かく表現することが可能です。

偏見や先入観にとらわれにくい、ブレにくい評価結果をアウトプットすることが可能ですが、その反面、チェック項目の選定や評価のウエイトづけに手間がかかる、評価者の評価意欲を阻害する可能性があるなどの問題点もあります。

具体的な評価方法

まず、ランダムに並べられた能力・態度に関する評語(短文)の中で、面接を通して応募者に見受けられた項目をすべて選びます。この評語(短文)は、ビジネスパーソンに必要とされる能力尺度(例:学習する力・思考する力・行動する力・協働する力)にカテゴライズすることができ、評価者が選んだ項目を能力尺度別に点数化することができます。

能力尺度毎の点数の高低・バランスを見ることで、評価者の判断基準に基づいて応募者を評価することができます。



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