単純

戦略的な人材要件定義と評価基準の設定

まず重要となってくるのは、企業が必要とする人材像をどのように定義すべきかという点です。

それぞれの会社で活躍する人材は異なります。たとえば同じホテル業界でも、ある内資系のホテルではお客さまの心に入り込み寄り添える「親密な」コミュニケーションが取れる人材が活躍しており、ある外資系のホテルではお客さまと一定の距離を保ちながら「スマートで心地よい」コミュニケーションが取れる人材が活躍しているという話を聞きました。業務の特性から必要となるスキルはもちろんですが、このように会社が目指すサービスの方向性や社風などを含めた「自社らしさ」の違いから、活躍する人材像は千差万別と言えそうです。

会社とはそもそもMVV(Mission Vision Values)に基づいた組織です。MVVとは、企業の存在目的(Mission)、あるべき姿(Vision)、大切にする価値観(Values)です。これを達成する過程で企業が目指している利益が生み出されていきますので、企業が成果を上げ、利益を出し、目指す方向へと成長するためにはこのMVVを達成できる人材とはどのような人材なのかを定義すれば良いわけです。

企業活動において、求める人材を獲得するための方法は大きく3つあります。

1)採用:あるべき社員像になりうる人材を見極め、入社させる

2)教育:社員のあるべき姿と現状のギャップを埋めるために企画した研修などにより、社員をあるべき姿へと育てる

3)評価:目標として社員のあるべき姿を提示し、そこに一定レベル到達した人材に対して報酬という形で報いることで、会社が目指すものや社員が進むべき方向性を伝え浸透させる

上記を見ていただいて分かる通り、採用とはこの人材育成サイクルの入り口であり、ここがうまく回っていなければ当然教育や評価もなし崩しとなるでしょう。採用とは、単なる人員補完ではなく、会社創りの基盤であると言えます。

 

実際にMVVを達成するための人材像を描いてみると、あらゆる能力、知識、スキルに秀でた、人間的にも成熟した人物像が出てくるのではないでしょうか。経営者をヘッドハンティングする場合などは、まさにこの人材像が採用要件になると言って良いでしょう。しかし、エントリーレベルの新卒採用や中途採用を行う場合には、このような完璧人間はなかなかめぐり会えるものではありません。

そこで大切なのは、このMVVを達成するための人材像をブレークダウンし、入社後に獲得、育成できる能力・スキルとそうでないもの(入社時点で必須の能力・スキル)に分けていくという作業です。採用時の必須要件を増やすことは、採用の質を高めることになりません。要件が多すぎることで狭い池の中で候補者を探さなければならなくなり、本当に優秀な人材を取りこぼしてしまうリスクが高まります。採用要件と育成要件は異なります。入社後の育成で誰でも身につけられるような能力を採用要件に入れる必要はありません。採用時点で何でも小器用にこなす小さくまとまった人材を採用するよりも、まだ粗削りだが後々大成するとがった人材を採用することの方が、会社の飛躍的な成長につながるのではないでしょうか。また、それがなければ業務が成り立たないノックアウト要件と、あればプラスになるがマストではないコア要件に分けることも重要です。

自社の育成の体制や、仕事内容、実際の現場の様子をじっくり分析し、最小限の要件に絞りこむことによりエントリーレベルで定義すべき人材像が見えてくるでしょう。

用件の分類

 

上記のような人材像を設定したとしても、次のようなレベルだと実際はなかなかうまくいきません。

  • コミュニケーション能力
  • リーダーシップ
  • 主体性

これは、言葉の捉え方に人によって大きく差があり、具体的ではないからです。たとえば前述の例を用いると、一言にコミュニケーション能力といっても内資系のホテルが求めるものと、外資系のホテルが求めるものでは大きな差がありました。

面接官が複数いるならば、この言葉の理解に対する差が生まれないよう、まずは要件を丁寧に定義することが重要です。その能力が必要となる背景を考慮し、どのような行動が取れる人材であれば良いのか、面接官がイメージできるレベルに落とし込むと良いでしょう。たとえばコミュニケーション能力で言うと次のようなものが挙げられます。

・目的と重要性を明らかにして、内容を組み立てて話す
・自分の内面を相手に開示し、深い人間関係を構築できる
・相手の声に耳を傾け、相槌(あいずち)や同意を使いながらより深い話を引き出すことができる
・相手の立場に立って物事を考え、行動できる

自社が必要とするコミュニケーション能力は何なのか、行動レベルで定義することで面接官の評価のブレを抑えることができます。 

また、同様に評価レベルも単純に3~1の3段階、といったものではなく3はどのような状態を指すのか、2は、1はということを明確にしておくことで面接官による評価を主観から客観へと変えることができるでしょう。

上記の「自分の内面を相手に開示し、深い人間関係を構築できる」を例に挙げれば、

3:自分から積極的に自己開示し、一歩踏み込んだ人間関係を構築できる
2:求められれば自己開示し、相手との距離を縮めることができる
1:自己開示することが困難で、一歩引いたコミュニケーションをしてしまう

といった評価レベルの定義ができます。この能力がノックアウト要件であるならば、1のレベルの応募者は不採用とすべきでしょう。

定義例


面接の基本3形式

ここでは、下記3種類の面接形式にについて、それぞれのメリットをまとめております。選考に応じて使い分けることが重要になります。

個人面接…1人の応募者を1人または複数の面接官が面接

メリット
じっくり掘り下げて質問することで、一人一人の応募者について細かい要素の見極めが可能。
応募者にも「じっくり見てもらえた」という納得感を持たれやすい。

デメリット
選考に時間がかかる。また多くの面接官(人的コスト)が必要。

グループ面接(集団面接)…複数(一般的には3~4人)の応募者を1人または複数の面接官が面接

メリット
一度に複数の応募者を選考でき、選考にかかる時間と人的コストを効率化できる。
また応募者をその場で相互に比較しながら面接できる。ネガティブチェック(望ましくない要素の見極め)に向いている。

デメリット
複数の応募者を比較することで相対的な評価になり、一人ひとりの応募者について細かい要素の見極めが難しい。
応募者にも「じっくり見てもらえた」という納得感を与えにくく、志望度アップには向かない

 

グループディスカッション/グループワーク…特定のテーマについて応募者が議論している様子を評価

メリット
一度に複数の応募者を効率的に、また比較しながら選考できる点はグループ面接(集団面接)(集団面接)と共通。
ネガティブチェック(望ましくない要素の見極め)に向いている。

デメリット
複数の応募者を比較することで相対的な評価になりがち、一人ひとりの応募者について細かい見極めが困難、
応募者にも「じっくり見てもらえた」という納得感を与えにくいという点はグループ面接(集団面接)と共通。

グループ面接(集団面接)との最大の相違は、応募者同士のコミュニケーションが見られること。さらに議論のテーマを実際の業務に関連のあるテーマにすることで、応募者の企業理解を深めることも可能。テーマの設定を失敗すると、応募者の志望度を下げることがある。またきちんと評価基準を決めておかないと、単純に発言量が多い応募者に評価が集中しがち。

 

以降では、それぞれの面接手法について詳細に考えていきましょう。

グループ面接(集団面接)

グループ面接(集団面接)とは、個人面接とは対照的に、複数(一般的には3~4人)の応募者を1人または複数の面接官が面接する手法です。グループ面接の特徴を改めてまとめてみましょう。 

メリット
一度に複数の応募者を選考でき、選考にかかる時間と人的コストを効率化できる
また応募者をその場で相互に比較しながら面接できる
ネガティブチェック(望ましくない要素の見極め)に向いている

デメリット
複数の応募者を比較することで相対的な評価になり、一人ひとりの応募者について細かい要素の見極めが難しい
応募者にも「じっくり見てもらえた」という納得感を与えにくく、志望度アップには向かない

また、下記に前述の「的確な面接手法を選ぶために、チェックすべき要素」に沿って、グループ面接の特徴を考えていきましょう。

1.採用人数(何人採るか)

グループ面接は「多数の応募者を、短時間で、単純な基準で選考する」ことに向きます。そのため、採用人数が多い場合は、選考フローの初期段階で使用されることが一般的です。一方、採用人数の少ない会社では、応募者の数も相対的に少ないため、集団面接を実施するメリットは薄いといえるでしょう。

 

2.求める人物像(どんな人を採るか)

グループ面接は上記のとおり、「単純な基準で選考する」ことに向いています。

例えば「話が分かりやすいか」「第一印象が良いか」「自社のことをよく調べているか」「身だしなみ・マナーが良いか」「質問への反応は早いか」という表面的な要素を評価することになりがちです。一人ひとりの細かい見極めには向きませんし、面接を通した志望度アップも困難です。したがって、グループ面接は「本当はすべての応募者に個人面接をしたいが、時間と面接官の数から考えて難しい」という場合に、個人面接に参加してもらう応募者を絞るための、次善策としてとらえるべきです。

1次から最終まで、すべての選考ステップにおいてグループ面接を実施するのは避けたほうがよいでしょう。

 

3.採用の決裁フロー(だれが見るか)

個人面接と同様、一般的に面接官の数は1~2名です。また、1次面接は現場社員、2次面接は管理職、最終面接は役員、といった具合に、選考が進むごとに、異なる階層の社員が面接官を務めるケースが多いという部分も個人面接と共通しています。

 

4.自社をとりまく採用環境(見極め重視で行くか、志望度アップ重視でいくか)

グループ面接は、個人面接に比べて応募者一人あたりの発言時間が短くなります。また、面接全体の時間も、個人面接より短いことがほとんどです(でないと「多くの応募者を一度に選考する」グループ面接を行うメリットが薄まるため)。そのため、応募者にとって「しっかり自分を見てくれた」という納得感を得ることは困難になります。志望度アップには向かない面接手法であると割り切るべきでしょう。

応募者に知名度の高い、いわゆる「人気企業」では、応募者の志望度が比較的高いため、選考の初期段階でグループ面接を行い、いわゆる「振るい落とし」を行う傾向にあります。

また、いわゆる不人気業界に属する企業では、採用人数が100人を超えるような場合でも、志望度醸成を優先し、グループ面接を実施しないケースがあります。


グループディスカッション

グループ面接(集団面接)とは、特定のテーマについて応募者が議論している様子を評価する手法です。グループディスカッションの特徴を改めてまとめてみましょう。

メリット
一度に複数の応募者を効率的に、また比較しながら選考できる点はグループ面接と共通
ネガティブチェック(望ましくない要素の見極め)に向いている
応募者同士のコミュニケーションが見られる
議論のテーマを実際の業務に関連のあるテーマにすることで、応募者の企業理解を深め、志望度アップを図ることも可能

デメリット
複数の応募者を比較することで相対的な評価になりがち
一人ひとりの応募者について細かい見極めが困難
応募者に「じっくり見てもらえた」という納得感を与えにくい
テーマの設定を失敗すると、応募者の志望度を下げることがある
きちんと評価基準を決めておかないと、単純に「発言量が多い」など表面的な要素で評価がしてしまいがち

また、下記に前述の「的確な面接手法を選ぶために、チェックすべき要素」に沿って、グループディスカッションの特徴を考えていきましょう。

1.採用人数(何人採るか)

グループディスカッションは「多数の応募者を、短時間で、単純な基準で選考する」ことに向きます。そのため、採用人数が多い場合は、選考フローの初期段階で使用されることが一般的です。また、「選考を通して業務の疑似体験を応募者にさせることができる」という特徴を生かして、採用人数規模にかかわらず、実施するケースが少なくありません。

 

2.求める人物像(どんな人を採るか)

グループディスカッションは上記のとおり、「単純な基準で選考する」ことに向いています。グループ面接との最大の違いは、「応募者同士のコミュニケーションの様子を見られる」という点になります。

 一方で「表面的な要素しか見えにくい」「応募者を一人ひとりじっくり見られない」という点はグループ面接と共通です。また、面接という非日常的なコミュニケーションとは異なるため、より応募者の「日常」に近い姿をチェックすることができます。

しかし、応募者側もグループディスカッションの対策を行っていますので、ありきたりなテーマ設定をしてしまうと「準備してきたセリフを言って、役を演じる」だけの場になってしまうリスクもあります。

 

3.採用の決裁フロー(だれが見るか)

一般的に1グループないし2グループにつき面接官が1~2名つくのが一般的です。グループディスカッションは最終選考に使用されるケースはまれで、人事採用ご担当者様もしくは現場の若手社員などが面接官を務める傾向にあります。

 

4.自社をとりまく採用環境(見極め重視で行くか、志望度アップ重視でいくか)

グループディスカッションは、面接官一人あたりが見る応募者が個人面接に比べ多くなるため、応募者にとって「しっかり自分を見てくれた」という納得感を得ることは困難になります。

では、志望度アップには向かないかというと、決してそんなことはありません。例えば、新商品の企画を考えさせる、自社の会社紹介プレゼンの内容を考えさせる、など、テーマによっては、ディスカッションを進めながら、自社の業務を疑似体験させることで、自社の理解度を高め、志望度を向上させることが可能です。

上記のように、「複数の応募者を効率的に」選考でき、かつテーマ設定次第では「応募者の志望度アップ」も狙えるというのが、グループディスカッションの利点と言えるでしょう。

一方で、たとえば「朝ご飯は和食か洋食か?」などの、応募者が「なぜこのようなテーマで話させるのだろう?」というような、自社理解に全く寄与しないテーマや、実施意図がわからないテーマでのグループディスカッションは、応募者の志望度を下げることがあります。


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